『スルースキル』 とは、
不快なことを見聞きした際に、受け流す能力のことです。
情報が氾濫するこの時代、
いちいち他人の発信に反応していては心身が持たない、
でも、不快なことが消えるわけじゃない。
「どうしたらいいの?」と危機感を覚える人もいるでしょう。
スルーできない自分が悪い?
受け流せば済む事柄に、
思わず反応してしまうことはあるとします。
そこで、傷ついたり、腹を立てたり、反論したり、
勝ち負けにこだわったりしても、
特に意味はありません。
それに
長期的には心を痛めていってしまいます。
スルースキルを身につけて
心の平穏を確保していただきたいと思います。
身につくには時間がかかります。
すぐに身につかなくても、「自分が悪い」と思わないでください。
失敗をしつつでも「今日より明日」と、上達を目指しましょう。
不快を認識する
心における直感的な反応が、快・不快です。
参考 >>『心理ブログ』快と不快について
自分で「あ、快だ」「これ不快だ」といったように
感じ取ることを心掛けてみてください。
その際、言葉に出す必要はありません。
嫌な事柄に対するスルースキルに関しては、不快に注目します。
自らの心に不快が生じた時に
それを頭で認識するように試みてください。
心の中で「きた、不快なやつだ」と呟くのです。
野生動物であれば、
この時点で勘に頼ってシンプルに行動を決める傾向があります。
牙をむいて戦うとか、ダッシュで逃げるとか…。
しかし人間の精神構造は、
動物のものよりは複雑にできているのでしょう、
良くも悪くも不快に反応する危機感の設定が低めなようです。
不快に対してすぐに反応しなかったり、
感じているはずの不快に無自覚な人も多いようなのです。
不快の対処
不快を感じさせる事柄と
距離をとれるか
検討してみましょう。
スマホ上で起きたことであれば、
「あぶない、嫌なものを見そうになった」と
視界から外して、長めに息を吐くなどして
不快が和ぐように試みてみましょう。
人づきあいなど、すぐに距離をとれないのであれば、
「不快になったけど、あとで気持ちを切り替えよう」と
考えてみるのはいかがでしょうか。
感情を認識する
心には、不快とともに
感情が喚起されることもあります。
ここでは、怒り、みじめさ、悲しさ、過去の傷ついた感情の再体験、
そういった感情が考えられます。
参考 >>『心理ブログ』感情について
ただし、やはり人間の精神構造は複雑なので、
同時に、
「以前に嫌な相手をネットで論破して
やっつけてやった」といった経験から、
勇ましい感情までもが湧いて、
それに突き動かされてしまう場合もあるでしょう。
また、自分と同じような反応をする仲間がいて
連帯感を覚えるかも知れません。
そこで感じるのは快の感覚です。
不快と快が混在する、
正反対の感情が同時に湧くこともある、
このあたりも人間の精神構造の複雑なところです。
「感情的」という言葉があるぐらい、感情は理性を阻害します。
時間を置くなどしてから改めて
感情について言葉にしたり文字に書き起こすなどを通じて
冷静に認識するよう心掛けましょう。
機嫌を認識する
感情・機嫌の対処
湧いてくる感情には、快や不快とは異なり、
それ相応に性質や個人的な意味合いが伴います。
心のコンディションである機嫌は、
湧いてくる感情との間で影響し合います。
ただ距離をとったり、気持ちを落ち着かせるだけではなく、
湧いてきた感情を収めるために
なんらかの手続きが必要な場合もあるでしょう。
そうしないと、嫌な感情が残ってその遣り場を求めたり、
機嫌が不安定になってしまうことがあるからです。
感情を刺激してきた相手に
心の中で「あんたはそれで良いよなー。私は私で生きていくよ」など
告げてみるのも良いかも知れません。
「僕には僕の好きな音楽があるんだ、それを聴いて楽しもう」といった
気持ちの切り替え方もあるでしょう。
また、
感情を含んだ気持ちを共感して分かってくれる人に
そのエピソードを話すのも、留飲を下げることに繋がります。
行動を認識する
ここでは、あくまで不快なことを受け流す
スルースキルの話として進めていきます。
社会的に認められる形での反論であれば
問題無いのかも知れません。
ただ、攻撃という形で感情を晴らそうとするのは、
ここではお勧めしません。
なお、「攻撃」と言っても、
自分を不快にさせた、嫌な感情を刺激した相手への
直接の攻撃とは限りません。
別のところに八つ当たりしてしまうこともあるでしょう。
みじめさの感情から、暴飲暴食であったり、
自分を傷つけるような行動をしてしまう人もいます。
行動の対処
相手、自分、その他への攻撃的な行為を控えるように心掛け、
その代替になる行動を見つけていきましょう。
心と行動はとても密接な関係があります。
生活習慣について検討してみるのも意味があると思います。
認知を認識する
『認知』 というのは、
一般にも使われる言葉ですし、
心理学用語としても本当はもう少し広い意味があるのですが、
ここでは、
「その人なりに捉える」という意味でお考え下さい。
認知、すなわち、自分なりの捉え方の認識を試みてみましょう。
仮に「今どきの若者は…」とクダをまいている年配の人がいたとしましょう。
それに対して、
若い人が「これは俺のことをバカにしているんだ」といったように
つい、自分自身に関連づけて腹を立ててしまうかも知れません。
でも冷静に考えると、
別に若者を代表して反論する必要など無かった、という場合もあるでしょう。
なぜなら、相手はただのクダをまいていただけに過ぎないからです。
「こんなことを見せられたら、黙っていられない」と
反応してしまいがちでも、
冷静になってみれば「スルーが正解だった」というものもあるでしょう。
認知の対処
スルーしない認知(ここでは、その人なりの物事の捉え方の意味)は、
言わば、身についてしまっている癖です。
基本的には、その認知の癖を自分自身で受けとめた上で、
妥当なものへと修正していったり、
別のもっと良いやり方を身につけていくことを通じて、
問題の解消を目指します。
ただし、
誰かに頭ごなしに否定されると反発したくなるのと同じように、
心にとっては、自分自身の癖に対してでさえも
頭ごなしの否定をしないことが重要です。
それが上記の「受けとめた上で」という言葉の意味です。
心理カウンセリングのご利用
スルースキルを高める上での
いくつかのポイントを挙げました。
ひとりで取り組めるものもあるでしょう。
心理カウンセリングで取り組んでいただくこともできます。
心理カウンセリングでは、
よく事情を伺った上で、
カウンセラーがバランスを考えて取り組みを設定し、
サポートをご提供いたします。
スルースキルというのは、ネットで生まれた新しい言葉で、
心理学の用語ではありません。
心理カウンセリングに足をお運びの際は、
「嫌なことをスルーできずに反応してしまう」などと
お伝えいただき、お話いただいて、
その思いをカウンセラーが受けとめるところから
始めていければと思います。
※ 当ブログで記す 「心理カウンセリング」 とは
川越こころサポート室が提供するものを想定しております。
他機関の専門性を保証するものではないことをご了承ください。
鹿野 豪
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