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自己肯定感とは(後編)

扉絵

「ありのままでいい」「このままでいい」が自己肯定で、

その際の『感覚』が『自己肯定感』です。

 

今回は、そんな『自己肯定感』に関する解説の後編です。

心のコンディション

心の状態には、その時々の「調子」があります。

 

身体や脳の働きにも、

「調子がよくない」というような

本来の力が発揮できない状態があるはずです。

「風邪で」とか「寝不足」「状況に緊張して」

などの理由でコンディションが下がる時があるでしょう。

 

心にもコンディションがあります。

コンディションが下がるとき。

「うつの状態で」「疲れてて」「ショックを受けて」

「プレッシャーで」「トラウマ体験で」

「うしろめたさで」「失敗が続いたから」「コンプレックスがあって」

「体調不良から」「気圧の影響で」

など、そういった理由から『気分』が下がる時があります。

『気分』というのは心のコンディションを表す言葉のひとつです。

 

『気分』が低調な間は

『自己肯定感』が湧きにくかったり、実感しにくいもの。

 

無理に上げようとしても、むしろその結果、つらくなるかも知れません。 

どうしてでしょう?

肯定の反対

「肯定」の反対は「否定」です。

 

「ありのままじゃダメ」「このままじゃNG」と思うのが自己否定です。

 

否定は心になんらかの『価値観』をともなって生じます。

否定の判断が起きるとき

文化や他者の中の『価値観』、言わば外(そと)の『価値観』があります。

それは絶対ではありません。

世間的にヒットした映画でも、

好きかどうかは個人の主体的な『感性』次第のはずですよね。

 

自己肯定は、この場合には「自分は自分の『感性』でいい」であり、

自分を信じて肯定します。

その逆の否定は「自分が間違っている」です。

外から影響を受けて自己否定が生じます。

たとえ仮に痛みこそ感じなくても、

内心ではつらい心境と近いものがあります。

 

また、

個人の『価値観』、心の内の『価値観』においても、

それがうまく適わないときがあります。

例えば自分が望む基準に達しないときなどです。

 

心の中の自分の『価値観』によっても

「ありのままじゃダメ」と自己否定が起きるのです。

「自分が変わらなきゃ」というのは常に前向きな意欲でしょうか。

もしかしたら『自己肯定感』の減退と表裏一体かも知れません。

自己否定はいけないのか

「これじゃだめ」→「次はこうしていこう」

「ありのままじゃだめ」→「自分には不向きな活動をしてたかも」

上に書いたように否定からでも

捉え方によっては心の健康度は下がりません。

 

良くない流れというのは、次のように続く展開です。

「ありのままじゃだめ」→「だから自分は無価値な人間だ」

「ありのままじゃだめ」→「どうせなにをしても無意味なんだ」

この二段階の否定は、

「ネガティブな心理状態になっている」と気づいておくことは大切です。

 

ここから、さらに三段階目の否定があり得るのです。

周りの人による三段階目の否定

「ありのままじゃだめ」→「だから自分は無価値な人間だ」

このような第二段階の自己否定をしている人に、

周りは「そんなことない」と声をかけたくもなるでしょう。

そこに第三の否定が生じる現象があります。

 

周りが「そんなことない、君は無価値な人間じゃない」と伝えても、

すでに心は否定の『判断』をしているなら、

本人の心には「いったい、他人になにが分かるっていうんだ」といった

反発が起きるのです。いくら厚意であっても受けとめられません。

 

思い出してみましょう。

ここでの「肯定」とは「ありのままでOK」でした。

「そんなことない、君は無価値な人間じゃない」は、

ありのままを肯定したことになっていないのです。

 

周りの人が、自己否定の『判断』をしている人を、

外からポジティブに向けようとすること、

それは表面的には上手くまとまるかも知れませんが、

心の奥の方では第三の否定になるかも知れない、その点に注意しましょう。

 

周りとして「そんなことない、君は無価値な人間じゃない」と伝えたい時、

「そんなことない」「…じゃない」という否定形の言葉を抜いて、

本人の心の動きに親身になって理解した上でなら、

同じメッセージでも伝わり方が変わりそうです。

内容はなんであれ、

「そんな経験をして、そんな思いになったんだ」

いうのが肯定的な理解と考えられます。

評価にとらわれ過ぎない状態へ

この世の中には「評価」と言えるものがいっぱいあります

 

 

ただ、

我々は「評価」をつうじてしか関われないのでしょうか?

それは、私はそうは思いません。

人と人との関わり、そして心の中にも、

「評価」をつうじてではないなにかが必ずあるはずです。

 

たしかに、残念ながら、世の中から、人の心の中から、

完全に「評価」というものが無くなるわけではないのでしょう

その『価値観』を強く感じてきた人もいらっしゃるはずです。

 

そこからでも、

「評価」にとらわれ過ぎることのない心理状態を

目指すことはできると思っています。

 

心理カウンセリングの場では、

いかに「評価」にとらわれない体験を味わうか、

「評価」にとらわれ過ぎない心理状態を日常にも反映していけるか、

といった視点が重要と考えています。

※ 当ブログで記す 「心理カウンセリング」 とは

 川越こころサポート室が提供するものを想定しております。

 他機関の専門性を保証するものではないことをご了承ください。    

鹿野の顔写真

鹿野豪

公認心理師(登録番号 : 2225)

臨床心理士(登録番号:  17852)

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