『負の連鎖』という言葉を聞いたことはありますか?
ちまたでは
「悪いことのループにおちいってしまう」という意味で
使われることもあるようですが、
それを、心理学の分野では「悪循環」と呼びます。
また、「悪いことが続く」という意味でも
使われるようですが、
心理学ではそのまま「悪いことが続く」などと言うでしょう。
負の連鎖とは
このブログで解説する
『負の連鎖』とは、
人から → 人を経て → また人へと連動する現象です。
人の心の働きを介して、
悪いことが起こり、それが人を経て、
また悪いことを生んでしまうというものです。
「暴力の連鎖」や「虐待の連鎖」などとも言われます。
そして、それに対して「連鎖を断ち切る」という言葉もあります。
連鎖が生じる理由
『連鎖』には主に、
心に備わるふたつの働きが関係しているのではないかと私は考えています。
ひとつは『再現性』です。
心には、なぜか同じことを再現しようとする働きがあります。
自然とやり方を学んで、繰り返そうとしているのかも知れません。
もうひとつは『反転性』。
「やられたら、やりかえせば気が済む」や
「やられたら、やる側に成り変われば気が済む」といったように
立ち位置や向きを反転させようとする心の働きです。
『再現性』と『反転性』によって
『連鎖』して人から人へと伝わっていきます。
そこに『自己正当化』が強く働いてしまうなら、
なおさら負の連鎖は断ち切りにくいものとなります。
なお、ここでの『自己正当化』とは、理屈だけではありません。
たとえ頭では「無関係な相手への攻撃は良くない」と考えていても、
心理的な「そうしないと気が済まない」という働きを受け、
例えば、相手の落ち度を探して攻撃を正当化するのです。
感情が絡んで、理性が負けてしまっている場合もあります。
『再現性』が働いているので、基本的には何度も繰り返されますが、
性質はそのままに、内容に関しては変化していくことがあります。
『連鎖』は、
すぐに起きることもあれば、
何十年もかけて連動することもあります。
親子の間でも起きますし、
学校や会社などの集団の中でも起きます。
『負の連鎖』を断つのは大変ですが、重要なことです。
負の連鎖と心理カウンセリング
「まさに負の連鎖の渦中にいる」という方は
その『連鎖』を断ち切るために、
もしくは理性を保てるよう『連鎖』から距離をとるために、
心理カウンセリングを訪れてみてはいかがでしょうか。
ちなみに
『連鎖』にまつわる現象としては、負とは逆の意味の
『正の連鎖』と呼ばれるポジティブなものもあります。
自分がしてもらった良いことを他の人にしてあげたくなる
というものです。
『正の連鎖』もまた、『負の連鎖』と同様に、
『再現性』と『反転性』という
ふたつの心の機能によって説明できます。
鹿野 豪
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