『繊細さん』という本のヒットにより、
繊細な人を意味するHSPという言葉が広まりました。
本を手に取ったり
ネットで解説文や動画に触れた方も
いらっしゃるのではないでしょうか。
日本国内で広まった言葉の意味は、
傷つきやすかったり、敏感で
(本のタイトル通り)繊細だったり、
ものごとを気にし続けがちだったり、
感受性の振幅が大きかったり、
などの心理面の特徴を表すとされています。
このブログでは
臨床心理士であり心理カウンセラーとしての
私見を記しますので、ご参考にしてください。
「自分はHSPにあてはまる」というみなさんへ
HSPに関する情報に触れて
「自分はHSPかも…」と思われた方。
きっとひとくちに「HSP」と言っても
事情は様々なはずです。
あなたにとってのHSP的な体験はなんですか?
身を置いている状況によっても、
心理状態によっても、
ひととの関係やものごとの取り組みによっても、
刺激の質や量は異なりますし、
その体験には個人差があるでしょう。
心理カウンセリングをご利用の際には
ご自身の特徴において
どういった体験をされているか
思いをそのままお伝えください。
それぞれの体験に対応していきたいと思います。
心理学者のとまどい
『繊細さん』の本によって
HSPという言葉が世に広まっていきました。
『繊細さん』やHSPという言葉によって
前向きな希望をいだくに至ったといった話も読みました。
また、事情を説明するのに
「自分はHSPなんです」は言いやすい場合がある
のだとしたら、それは以前は盲点でした。
「HSPという言葉で救われた」というお気持ちは真摯に受けとめます。
その一方で、実は、
私を含めた心理学の専門家たちが
若干やきもきしている現状もあります。
というのも、
HSPという言葉は
心の特徴を言い表すには
意味があまりに広すぎるのです。
本で紹介されたものだと「繊細さん」ということですが、
その中にさまざまな要素が含まれすぎます。
HSP仲間と思っていたような
同じくくりと思っていた人たちの間でも
「なんだか、この人と自分はHSPと言っても根本的に違う」と
いうことが起こるのではないでしょうか。
海外では、本で紹介されたものとは違う
HSPのとらえ方もあります。
ただ、それともまた異なり、
ここでは私なりに「この心の現象を心理学で扱うとしたら」と
考えてみました。それが次の項です。
私はこう考えました
「繊細さ」の中心となる要素は
心理学では「刺激に対する敏感さ」に
置き換えられるでしょう。
刺激はどこからくるのか。
心の仕組みの上で、次の3か所に分けられます。
(1)外界から(見聞きしたものや周りの人との関わりなど)
(2)身体から(痛みや緊張、ホルモンバランスなど)
(3)心の中から(自分自身の思いや感情、記憶など)
心が受ける刺激は、この3つの
「どれかから」または「複数から(同時に/連動して)」もたらされます。
心の『感度』という機能が敏感であるほど、刺激は、
圧倒されるほど急速に大きくなったり、
一度でスッと収まらずに心の中で反響したり
しがちです。
ここまでの説明は、心の『感度』の話になります。
『感度』とは、敏感さ・鈍感さを表す用語です。
そこから先、
「相手の反応を気にする」「罪悪感を覚えやすい」「感化されやすい」
などは『感受性』や『感性』です。
『感度』と連動しますが、別の働きです。
個人の個性を考える時、
まず『感受性』や『感性』の性質に軸を置いた上で、
その『感度』が敏感か鈍感かに注目することになるでしょう。
『感度』の程度もそれ自体が人の個性を表すことはありますが、
どちらかと言うとたいていは『感受性』『感性』の方に軸があります。
このように心理学には
心の仕組みを説明する言葉がいくつもにあります。
ここで語りつくすのは難しいですがざっくり言うと、
『感受性』については
傷つきがちな面のある中で
個人の思いをひとつずつ丁寧に大事にする方針が立ちます。
『感度』については
心に刺激が増幅してしまう現実を踏まえた上で
環境調整などの刺激を減らす工夫や
混乱を収める行動を模索するなどの取り組んでいく事柄があります。
どちらもタイプ別というよりは個人的なものと考えます。
「自分はHSPかどうか」というくくりにとどまらず、
あくまで個人的な体験や思いをお伝えいただきたいというのは
そういった理由からなのです。
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