今日は 『発達障害』という用語について、
臨床心理学の視点から書きたいと思います。
特に、
「発達障害について調べてみたら、
解説が漠然としているし、
予想していたよりも種類があって、
戸惑っている」のでしたら、
ぜひ読んでいただきたい内容です。
発達障害についての整理
まず、
(1)発達障害は、
根本的な治癒を目指す病気のたぐいではありません。
確かに、お医者さんが診断をしますが、
病気を発症しているわけではないのです。
そのため、基本的には「治療」や「治す」という言葉は使わないのです。
そして、
(2)発達障害との診断を受ける人は、
脳の何かの機能において、
標準とみなされる範囲と比較すると
特徴的な偏りや機能不全なところがあります。
それは、脳の機能が成長=発達する中で、
怪我や病気の後遺症といった経験とは関係無く生じるものです。
なお、
脳の何の機能がそれに該当するのかは、
医学が定めるところの診断の分類に基づきます。
例えば、
「数字が把握できない」というのは
発達障害の学習障害のひとつに分類されます。
その一方で、「色が認識できない」は発達障害とはみなされません。
ここまでが「発達」に関する説明です。
そして次の言葉が組み合わさります。
(3)「障害」とは、
不自由が生じ、特別な補助が望まれるという意味です。
特別な補助がなければ、不自由が起きがちです。
発達障害の補助とは
場合によっては、
お医者さんが処方してくださるお薬が
気持ちの乱れに対する落ち着きを補助してくれます。
ちなみに、
先ほどは、基本的には「治療」という言葉は使わないと述べましたが、
お医者さんによっては、この服薬を「治療」と呼ぶかもしれません。
生きやすさ・生きにくさについての補助はどうでしょうか?
まず望まれるのは、
周りの人が、できれば本人もですが、
特徴を受けとめ、把握し、理解していくということです。
続いて、
不自由を緩和できるような補助を
模索し続けていくことになります。
世の中の取り組み
日々、発達障害を持つ人を支援している現場では
アイデアが生み出されて様々な取り組みが行なわれており、
新しい理論が生まれています。
また、テクノロジーの進歩によって、
より良い補助の技術が開発されることもあり得ます。
いくら診断名が終始一貫していたとしても、
その人にとっての「障害の意味」は変わり続けます。
そのため、個々人の発達障害の
理解や把握、緩和の模索は続いていくのです。
発達障害は治らないの?
この質問には、答えが複数あります。
まず、脳の機能という意味では、
現代では克服の困難なものもあるでしょう。
一方で、
補助によって不自由が減らせたとしたら、
「障害」にさいなまれる渦中にいた頃とは
異なる可能性が見えてくるかも知れません。
発達障害によって、生きにくさ、苦労、傷つきなどを
たくさん味わってきたというご本人や
場合によっては周りの方が
そのように体験していることもあるでしょう。
「治ればいいのに」という思いが湧くのも分かります。
そういったこれまでの体験や思いについても
ケアされるべきでしょう。
さいごに
このブログでは、以上となります。
これらの予備知識を踏まえていただくことにより、
他の本やネットに出ている発達障害の解説が
少しでも分かりやすくなれば幸いです。
一緒に、工夫していきましょう。
鹿野 豪
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