『アンビバレント』という言葉をご存知ですか?
心理学では「アンビバレントな感情」という使い方をします。
今日は、この言葉の意味を共有したいと思います。
まず、感情とは
日常に使われる言葉ですが、
心理学での意味を押さえていきましょう。
『感情』とは、心の中に湧いてくる、
なにかしらの意味や性質を持った情に関するものです。
(参考 >>『心理ブログ』感情について)
感情は「心に湧いてくる」の部分がポイントです。
昔の人は、心の中に湧いてくる情にまつわるもの
それぞれ性質ごとに言葉を当てて
「嬉しさ」「悲しみ」「怒り」「焦り」「恐怖」などと
呼び始めたのでしょう。
そうやって私たちは『感情』を理解しようとしているのです。
さらに、心理学では『感情』の性質に注目したんだそうです。
おおきく
「ポジティブな感情」と「ネガティブな感情」の
ふたつに分けたのでした。
日本語に訳して、
「正の感情」と「負の感情」と説明している本もあります。
ポジティブ(正)とネガティブ(負)の意味はおおよそ、
皆さんのご想像通りで良いのではないでしょうか。
「嬉しい」「楽しい」「勇気」といった性質は
ポジティブな感情とみなされます。
一方、
「寂しい」「むなしい」「頭にくる」などは
ネガティブな感情に分類されます。
ここで注意点です。
感情が生じたり、維持されたり、消えていくには
『快』や『不快』といった直感的な感覚が
関与していることが多いです。
(参考 >>『心理ブログ』快と不快について)
基本的には
『快』の感覚から「ポジティブな感情」が生じるとされます。
好きな食べものを食べた際の快の感覚で、
嬉しいというポジティブな感情が湧くとされているのです。
理論上は、そうです。
同様に、基本的には
「ネガティブな感情」は、『不快』の感覚から生じます。
ひとりぼっちの状況によって不快を覚えて、
悲しいというネガティブな感情が湧くと考えられます。
しかし、人間の心は少し複雑です。
例えば、
好きな食べものを食べて『快』の感覚が生じた、
それにも関わらず、
一緒に食べて欲しい相手の人がそばにいなくて、
むしょうに悲しくなって涙がこぼれたとしましょう。
どうでもいい味ではなく
美味しいからこそ悲しくなるのです。
これは『快』の感覚から
「ネガティブな感情も湧いた」ことになります。
また、例えば、
罪悪感を覚えている時に、
身体をぶつけて痛い思いをしたとしましょう。
その痛さで心では罪悪感が解消される現象が起こったりもします。
痛みで罪悪感が解消されてホッとします。
つまり、『不快』であるはずの感覚から
「ポジティブな感情も湧く」のです。
お気づきの方もいるかも知れませんが、
心理学で『感情』のポジティブ、ネガティブというのは
ただの分類に過ぎません。
他にも、
ポジティブな感情に突き動かされて失敗したり、
ネガティブな感情で泣いてスッキリすることもあるのです。
ややこしい話になったので、いったん整理します。
・『感情』は「ポジティブ」と「ネガティブ」に分類されている。
・『快』もしくは『不快』と連動をする、けれど逆に結びつくといった例外もある。
この2点を押さえておきましょう。
ちなみに、
モヤッとした感情のように、『快』や『不快』の感覚も弱くて
「ポジティブ」とも「ネガティブ」とも言えない感情もありますが、
(参考 >>『心理ブログ』感情のベクトル)
今回の話題では触れないで進みます。
また、感情が心に残ったり、『機嫌』という状態が続いたり、
意味づけが個人的に独特なものになるものもありますが、
それらの話はいったん保留にして、
このブログの最後に「必ずしも単純ではなくて、いろいろあるらしい」と
ちょっとだけ思い出していただければと思います。
アンビバレントとは
ポジティブな感情とネガティブな感情という
性質の異なる感情、両方ともを、
同じ対象に対して覚えること。
それが『アンビバレンス』です。
ス?
最後がスの『アンビバレンス』は、
上で説明した現象そのものを指します。
トで終わる『アンビバレント』は、
「アンビバレントな感情」と言うように、
国語で言うところの形容詞、
つまり、なにかしらの言葉をくっつけて使います。
ブログのタイトルは「アンビバレント」にしましたが、
深い意味はありません。どちらでもいいです。
アンビバレントな心理状態
アンビバレントな心理、
(アンビバレンスの心理と言い換えても良いのですが、)
それは
ポジティブ(正)とネガティブ(負)という
異なる性質の感情が
同時になにかに対して湧く時の話です。
その背景には、
快からネガティブな感情が生じたり
不快からポジティブな感情が生じるといった
いわゆる例外による場合もあれば、
関係性のいろんな側面によって
生じる感情がひとつでない場合もあるでしょう。
異なる性質の感情が同時に湧いている時、
どちらか一方の感情を採用したら、
採用されなかった方の感情も心の中で黙っていません。
アンビバレントが生じて整理できないでいると
心が混乱したり、心に負荷がかかったり、
誤った処理をすることが起こりがちです。
強い感情のアンビバレントでは特に、
理性の働きが阻害されて思わぬ判断をしたり、
『心因性(しんいんせい)』と呼ばれる症状に繋がることもあります。
アンビバレントと心理カウンセリング
最終的な目標となるのは、
アンビバレントな感情を
どちらも無理なく味わえるようになることです。
両方感じているのに「どっちか」になるのは
心にとって不健全という考え方からです。
そのために、心を整えていくという方針があります。
感情にまつわる現実の状況について検討したり、
『快』『不快』、感情の性質などの理解を深めたり、
感情を味わうことの怖れを取り除いていく取り組みがあります。
簡単なようですが、実はこれらは難しいことなのです。
「なにが難しいか?」というと、
それは個人差や事情によるので、ここではなんとも書けません。
でも、「どうして難しいか?」というと、
実は、感情というのは、
他の要素と複雑に絡み合って
発生の仕組みが心の中に組み込まれていくからだ、と言えます。
アンビバレントに感情が湧いているとなれば、
なおさら単純ではないというわけです。
心の中にあるアンビバレントの心理がつらくて
「解消していきたい」「混乱をどうにかしたい」
「負荷を和らげていきたい」という方は
ぜひ心理カウンセリングをご検討ください。
※ 当ブログで記す 「心理カウンセリング」 とは
川越こころサポート室が提供するものを想定しております。
他機関の専門性を保証するものではないことをご了承ください。
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