今回は心理学の言葉を紹介します。
『アクティングアウト』です。
なお、ここでは
あえて古典とは異なる現代版の解釈をしています。
より深めたい方は元のフロイト版と比較してみてください。
アクティングアウトの意味
『アクティングアウト』とは
衝動に従って安易に欲求を充足するための行動に走ることを意味します。
欲求の充足
ひとは誰しもなんらかの欲求を持っていて当然です。
個人差があって、例えば
「積極的に獲得したい」といった活動的な欲求の形もあれば
その逆のような
「静かに過ごしたい」といった欲求の形もあるでしょう。
また、
ひとりの人の中にいろんな性質の欲求があって
その程度は時と場合で変わります。
ひとはそんな風に「欲求を充足させたい」と感じたり思ったりします。
欲求不満(不充足)
ところが欲求が
いつでも満たされるわけではありません。
欲求不満の状態がおとずれます。
欲求不満はそれなりにしんどくて、
できればスッキリさせようと模索する
心の動きが自然と見られます。
欲求不満に耐えられる程度を、
『欲求不満耐性(よっきゅうふまんたいせい)』と言ったりもします。
その程度もまた個人差があり、
さらには時と場合で変わることでしょう。
なかなか成果の上がらない地味な取り組みなどは
欲求不満を積もりがちです。
欲求不満に耐えかねて、『アクティングアウト』、
安易に欲求を充足する行動へと向かうことも考えられます。
その際、欲求そのものへ向かうこともあれば、
なんらか別の形に置き換えて
欲求不満の解消へと向かうこともあるでしょう。
安易にについて
冒頭で『アクティングアウト』の意味として
衝動に従って安易に欲求を充足するための行動に走ること
と書きました。
ここでの「安易に」というのは
「もう少し欲求不満の状態で維持していられたら
別の可能性があったのに」というものです。
「別の可能性」というのは例えば…
他者との対話の可能性があったり、
より本人が納得できる充足感の可能性があったり、
なにかの問題に至らずに済んだり…。
このことから分かるように
「なにが安易か」は「別の可能性があるか」と対になっていて
切っても切り離せないものです。
「別の可能性も選択はできた」というのは、
「このアクティングアウトは安易だった」の裏付けに必要なのです。
「別に選べる選択の可能性」が見出されていないにも関わらず、
「欲求充足に走った行動は安易だった」とみなすというのは
つらいというか、しんどいですよね。
また、「安易」や「別の可能性」を
誰かしらが一方的に決めつけたりお仕着せることはできないのを
前提としておくのが良いでしょう。
「別の可能性があったのに」は本人が思うからこそのものです。
衝動
『アクティングアウト』を知る上で押さえておきたい言葉が
『衝動』です。一般に使われる言葉ですね。
心が内から突き動かされるように感じる現象を、『衝動』と言います。
『衝動』は、その勢いや速さもあって
理性を介在させないと思われがちですが、
仮にそういう性質が『衝動』という心性だとしても
いかにその勢いや速さに「間」を作れるかが重要です。
「一呼吸置く」とか「一晩置いてみる」などとも言われます。
おおげさな話ではなくて、
『衝動』の強い人は
いかに「間」を作れるかが人生のテーマのひとつに
なることもあるでしょう。
『アクティングアウト』を理解するというのは
これらの関連する現象を理解することで成り立つのです。
アクティングアウト後の心の動き
地道な解決よりも簡単で、充足感もある現象。
『衝動』的に『アクティングアウト』をした後に、
心にはなにが起きているでしょうか。
安易な欲求の充足で、それが「安易だ」とうっすらでも自覚するとき。
快と不快の綱引き状態。
ある人は後悔や自責の念にさいなまれるでしょう。
またある人は、
『アクティングアウト』について自己正当化せずにはいられないのかも知れません。
自分にあきれたりうんざりして次第に自暴自棄になる人もいます。
自らの『アクティングアウト』に振り回されていて
繰り返しにおちいる面もありえます。
自分を追い詰めてるように見える面もあります。
ですが本人の愚かさではなく、
これこそ『アクティングアウト』というものの手ごわさなのです。
アクティングアウトを把握する
『アクティングアウト』が納得の無いパターンを形づくっている時、
冷静に考えられれば、それを脱却したいと思うでしょう。
それならばまず、全体像を把握していくことが重要です。
そこでは「良い・悪い」の評価をすることなく
ありのままそのまま把握するのが肝心です。
・個人的な欲求を言葉にしてみる。
・欲求の充足と不充足の感覚を確かめていく。
・それらの「時と場合」を整理していく。
・『衝動』の予兆を知る。
・アクティングアウト後に起きている心理を分析する。
・……
※これらは今回のブログ用の例です。教科書的に網羅しているわけではありません。
心そのものの力
『アクティングアウト』のつらさからの解放は
外から力を加えて無理やりに叶うものではありません。
心は生きているので、
無理やりに変容させるのではなく、
把握から始めましょう。
そして、
モチベーションを保ったり
罪悪感を減らしたり
自尊心を向上させたり
などなどのバランスの中で進めていくのが好ましいでしょう。
特に『衝動』に負けてきたことで形成された『無力感』やそれにまつわる感情を癒すのは重要です。
視点を自らの感情に呑まれてしまわないところに置いて、
そこに発生する心の力を大事にしていきたいものです。
本来の欲求ではなく代わりになる何かを見つけることも
助けになる点で悪くはありません。
このブログがヒントになれば幸いです。
心理カウンセリング
心理カウンセリングでは
心の動きをそのままありのままに把握していく
というサポートをいたします。
カウンセラーは心を「良い・悪い」で評価をいたしません。
一緒に取り組んでいきましょう。
カウンセリングが心にとっての対話を通じた
可能性になることを願っています。
※ 当ブログで記す 「心理カウンセリング」 とは
川越こころサポート室が提供するものを想定しております。
他機関の専門性を保証するものではないことをご了承ください。
※ 「『アクティングアウト』とは安易に欲求の充足に走ること」という定義は
書籍からではなく、今回の解説のために分かりやすく述べたものです。
古典的には「葛藤について、対話で扱うはずのところを、行動によって解消に走ること」を指し、
たいていは「心理療法において(の抵抗として)」という文脈で語られてきました。
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