記憶はどこにたくわえられるのか?
この問いに、
人体について勉強をした人は
「脳にある海馬(かいば)という部位」
と答えるでしょう。
脳科学や医学では正解
でしょうけれど、
臨床心理学ではこれだと残念ながら正解にはなりません。
知識の記憶や
エピソードを憶えている記憶は
たしかに脳で蓄えられます。
ですが、
体験としての記憶は
身体や心が、脳とは違う意味で記憶していくのです。
身体の記憶
頭で考えずに反応するのを『反射』と言いますよね。
生まれ持った本能的な『反射』もありますが、
経験によってその人なりの『反射』を作り上げていく面もあります。
身体の神経・五感や、筋肉、心拍・血流、臓器などが
できごとを憶えている(記憶している)のです。
そう考えてみると、
身体も体験しながら記憶をたくわえていると言えるでしょう。
心の記憶
心は、
ただ情報を蓄えているところではありません。
感覚や感情をつかさどり
心なりの意味をもって記憶をしていきます。
「心の働きも脳に含まれるんじゃないの?」という
ご質問もあろうかと思います。
心と脳が別物というのは、こんな風に考えてみてください。
科学技術が進歩した未来に脳組織を徹底的に分析できたとしても、
例えばそこに、誰かと出会って恋愛感情が湧いて、思い悩んで苦しくなって
傷つきやすくなってテンパって変なことを言ってしまって
恥ずかしくなって会いたいけど会うのが怖くて我慢する心境、
みたいな話は出てこないでしょう。
これは脳機能ではなく心境、まさに心のことだからです。
心には、個人的な心の記憶があるのです。
3種の記憶
頭・身体・心、それぞれの記憶の仕方は異なります。
今回のブログで詳しくは書ききれませんが、
同じできごとの記憶であっても、
その人にとって、
頭の記憶・身体の記憶・心の記憶がズレることはあります。
このズレるという現象は
体験として落ち着かなかったり違和感があるでしょうけど、
生じること自体はおかしなことではありません。
頭では分かっていても心がついてこない、
なんてことありますよね。
記憶に関しても3種の記憶がズレることはある、
と考えてみましょう。
ズレをごまかしたり無いとみなすのではなく、
あるものとしてとらえていく視点から
心の整理が進む場合もあります。
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