少なくとも2024年現在、
精神医学には
『パーソナリティ障害』という診断のための用語があります。
ネットで検索すれば説明が出てきたり、
AIが解説してくれたりもするでしょう。
なぜ私がこのブログの冒頭で
「少なくとも2024年現在」と書いたかと言うと、
この『パーソナリティ障害』という用語は昔からあるものの
非常に複雑なバランスの上に成り立っていて、
今後どんな変更が加えられるかも分からないからです。
かつてはブログにも書かないでおこう、と思っていました。
ですが、
間違った知識があまりに世間に出回っているので、
少しでも収束に役立てればと
今日言える範囲で書き記すことにしました。
ここには
「精神医学の正しい知識」は書きません。
ましてや「心理学の正しい知識」を書くわけでもありません。
この話題に関しては
「正しい知識」を書こうとすること自体が
間違いの始まりだからです。
それよりも、もっと
『パーソナリティ障害』の本質に迫るものに
したいと思います。
あくまで切り口のひとつですが、お付き合いください。
欲に注目する
『パーソナリティ障害』の人は、
その人にとっての『欲』の達成を
最重要事項とみなします。
逆を言うと、
同じトラブルをくり返す人でも
『欲』の達成のためではなく他に理由があるのなら
『パーソナリティ障害』ではない可能性があります。
例えば、たびたびトラブルを起こす原因として
心にトラウマを抱えたままだからという人が
『パーソナリティ障害』と誤診されることもあるでしょう。
同様のことは、『発達障害』の場合などにも起こります。
ただし、トラウマが原因だったら、発達障害だったら、
『パーソナリティ障害』ではない、というものでもありません。
発端はなんであれ、
『欲』の達成を最重要事項とみなす心理状態が
強く定着することはあります。
どんな欲があるか
『欲』の達成を最重要事項とみなすことが
本人や周りの人を追い詰めてしまう
『パーソナリティ障害』。
その分類を『欲』の種類で見てみましょう。
・自分が一番とみなされたい欲。→自己愛性
・他者との関わりを最小限にしたい欲。→シゾイド型
・他者や社会を傷つけたい欲。→反社会性
・大仰に振舞って周りを翻弄したい欲。→演技性
・関係性から逃げたい欲。→回避性
・ひとつのことに強くこだわっていたい欲。→強迫性
・ありもしないことを「ある」と主張したい欲。→妄想性
・他者に密着したい欲を持つが、罵倒や価値下げ評価もしてしまう。→境界性
・何かとの関係性で満たされたい欲があり、そうでないと激しく不安になる。→依存型
※ここに挙げた分類は代表的なもので、
全種類とは限りませんし、時代とともに変わることもあるでしょう。
パーソナリティ障害を考える
『パーソナリティ障害』とそうでない状態との
区別はどこにあるの?であったり
虚言癖と演技性や、依存症と強迫性はどう違うの?
圧政に立ち向かった革命家は反社会性なの?
などの疑問があってもそれは当然です。
むしろこの疑問はずっと持ち続けていくべきものです。
医学や心理学での現時点で言えることに納得して
思考停止する方が、本質から遠ざかってしまいます。
ここでは答えを出しませんが、
少しだけ先に進んでみましょう。
自己正当化・反省のしなさ
『欲』の達成をめぐってトラブルが発生しても、
『パーソナリティ障害』の人には
自己正当化が強く働いて
反省ができないという特徴があります。
悔んだり傷ついたりはしても、
『パーソナリティ障害』を形作っている
『欲』にまつわる行動や心情そのものについて
内省したり調整・修正しようとはしないのです。
また、その特徴を指摘したら直るものでもありません。
完全に反省ができないわけでもありませんが、
巻き込まれている当事者が
本人に反省を促すのは
失敗に終わることが多いでしょう。
お願い
今回のブログの意義は、そもそも
「精神医学に基づく正しい知識」や
「心理学に基づく正しい知識」ではありません。
目に余るほど世に出回っている
誤情報、誤診、誤った対応の多さに対して、
「一度、『欲』の達成が最重要事項に
なっているかどうかに注目してみてください」という
提言をするにとどまるものです。
『パーソナリティ障害』という言葉の
ひとり歩きを少しでも収束させるためのものであり、
精神医学と心理学の役割や限界がどうだこうだといった
不必要な論争は望んでおりません。
精神医学の定義としての『パーソナリティ障害』は
どこかで読めると思います。
このブログはそれと併せて
考えるヒントとして書かれたもの、
ぐらいにご理解ください。
※ 欲の達成を最重要事項とみなすというアセスメントの視点は
2006年ごろから鹿野が各所で話している個人的な見解です。
どこかの公式見解といったものではないことをご了承ください。
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